PLZT光回路
1.研究背景
平面光回路(PLC : Planar Lightwave Circuit)は、光通信に必要な光部品の1チップ集積を可能にする技術である。 PLZT((Pb, La)(Zr, Ti)O3 : ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛)はナノ秒で応答する電気光学効果を示す。また、電気光学係数が大きく、低電圧で大きな屈折率変化が得られることで知られている。 PLZTを用いた光回路は、低駆動電圧でナノ秒の高速応答が可能である。本研究では、PLZT導波路を用いたアレイ導波路回折格子(AWG : Arrayed-waveguide Grating)を要素とし、高速動作する波長機能素子を実現する。高速光機能素子は、通信におけるガードタイムを削減するだけでなく、光バーストスイッチング、光パケットスイッチングを実現するために不可欠である。
2.研究目標
(a)PLZTアレイ導波路回折格子の高分解能化
現在の光通信はチャネル間隔50 GHzで波長分割多重されている。一方、従来のPLZTアレイ導波路回折格子はチャネル間隔が500 GHzと大きく分解能が不足している。PLZTアレイ導波路回折格子を高分解能化し、光通信に適用可能な性能を実現する。
(b)位相誤差補償によるクロストーク低減
従来のPLZTアレイ導波路回折格子はクロストークが-20 dBと大きく、使用に問題があった。また、アレイ導波路回折格子の高分解能化はクロストークが増大することから、クロストークの低減が必要不可欠である。これを位相誤差測定と位相誤差補償によって実現する。
(c)石英およびPLZTハイブリッド集積波長選択スイッチ
平面光回路技術において、石英回路は非常に良好な特性を持つが、スイッチング方式が熱光学効果に限られ応答速度がミリ秒と遅い欠点がある。一方、PLZTアレイ導波路回折格子は、クロストークが約-20 dBと大きいが、電気光学効果を有するためナノ秒でのスイッチングが可能である。これら二つの回路をハイブリッドに集積し、受動部分には石英回路、能動部分にはPLZT回路を用いた高速応答可能、低クロストーク特性を有するデバイスを実現する。
3.研究項目
(a)PLZTアレイ導波路回折格子の高分解能化[2]
図1 PLZT埋め込み型導波路の断面
エピフォトニクス株式会社によって新たに開発されたPLZT埋め込み型導波路は、従来の導波路と比べ小さな曲げ半径でのデバイス設計を可能にした。この導波路は、屈折率の大きなPLZTコアが屈折率の小さなPLZTクラッドに埋め込まれている。
図2 マスクレイアウト 図3 チップ写真
チャネル間隔200 GHz、チャネル数8のアレイ導波路回折格子を設計することが可能になった。デバイスサイズは9 mm x 25 mmとなった。
図4 可変波長特性
アレイ導波路の電極に電圧を加え可変波長動作を確認した。損失は19 dB、クロストークは-13 dBであった。
(c)石英およびPLZTハイブリッド集積波長選択スイッチ
図5 位相誤差測定系
可変波長光源とMach-Zehnder干渉計を用い、PLZT-AWGの位相誤差を測定した。
図6 振幅特性 図7 位相特性
測定の結果、振幅特性がおよそガウス型であること、位相誤差がクロストーク増大の原因であることを確認した。
各導波路に位相誤差に応じた位相変化量を電気光学効果を用いて与え、位相誤差を補償した。クロストーク特性は-7 dBから-19 dBに改善した。
(c)位相誤差補償によるクロストーク低減[6]
図9 マスクレイアウト 図10 チップ写真
1x2、チャネル間隔200 GHz、波長数20の波長選択スイッチを試作した。石英PLCによる波長分波チップ、波長合波チップおよびPLZT導波路からなる光スイッチを紫外硬化接着剤を用いてハイブリッド集積した。
図12 高速切替特性
高速に変化する電圧を印加して光出力の変化を測定した。立ち上がり時間、立ち下り時間13 ns以下で動作することを確認した。
4.本研究に関する研究発表リスト
(a).論文 | |
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[1] | H. Asakura, K. Nashimoto, D. Kudzuma, M. Hashimoto and H. Tsuda, “High-speed wavelength selective operation of a PLZT-based arrayed-waveguide grating,” Electron. Lett., Vol. 48, No. 16, pp. 1009-1010(2012). |
[2] | Hideaki Asakura, Keiichi Nashimoto, David Kudzuma, Masahiko Hashimoto, and Hiroyuki Tsuda, “200-GHz spacing, 8ch, high-speed wavelength selective arrayed-waveguide grating using buried PLZT waveguides,” IEICE Electron. Express, Vol. 9, No. 7, pp. 712-717(2012). |
[3] | J. Ito, M. Yasumoto, K. Nashimoto, and H. Tsuda, “High-speed photonic functional circuits using electrically controllable PLZT waveguides,” IEICE TRANSACTIONS on Electronics, Vol.E92-C, No.5, pp.713-718(2009). |
[4] | M. Yasumoto, T. Suzuki, H. Tsuda, M. Raj, D. Kudzuma, J. Dawley, D. Ritums, Y. Tanaka, M. LaBuda and K. Nashimoto, “Fabrication of (Pb,La)(Zr,Ti)O3 thin film arrayed waveguide grating,” Electron. Lett., Vol. 43, No. 1, pp. 24-25(2007). |
(b).国際会議発表 | |
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[5] | H. Asakura, K. Nashimoto, D. Kudzuma, H. Kawashima, and H. Tsuda, “High-Speed, Hybrid Integrated, 1x2 Wavelength Selective Switch Using PLZT Optical Switches and Silica Planar Lightwave Circuits,” 18th Microoptics Conference (MOC2013), F4, Oct. 2 7-30, Tokyo, Japan, (2013). |
[6] | Hideaki Asakura, Keiichi Nashimoto, David Kudzuma, Masahiko Hashimoto, and Hiroyuki Tsuda, “Crosstalk Reduction of a PLZT Arrayed-Waveguide Grating by Phase Error Compensation,” The 10th Conference on Lasers and Electro-Optics Pacific Rim(CLEO-PR 2013) & The 18th OptoElectronics and Communications Conference(OECC 2013)/Photonics in Switching 2013(PS 2013), WO4-5, Kyoto, Japan, Jun. 30-Jul. 4, (2013). |
[7] | Hideaki Asakura, Hiroyuki Tsuda, Keiichi Nashimoto, David Kudzuma, Masahiko Hashimoto, “Error-free tunable channel selection using a PLZT arrayed-waveguide grating,” Photonics in Switching 2012, Fr-S36-O16, Ajaccio, France, Sep. 11-14, (2012). |
[8] | H. Tsuda, M. Yasumoto, J. Ito, D. Ritums, J. Dawley, D. Kudzuma, Y. Tanaka, and K. Nashimoto, “15 ns, high-speed wavelength tuning over 16 nm using electrically controllable PLZT arrayed waveguide grating,” OFC/NFOEC2007(Optical Fiber Communication Conference and Exposition (OFC) and the National Fiber Optic Engineers Conference (NFOEC)), March 25-30, Anaheim, U. S. A., PDP47, (2007). |
[9] | M. Yasumoto, T. Suzuki, H. Tsuda, M. Raj, D. Kudzuma, J. Dawley, D. Ritums, Y. Tanaka, M. LaBuda, and K. Nashimoto, “(Pb, La)(Zr, Ti)O3 Thin Film Arrayed Waveguide Grating,” LEOS 2006 Annual Meeting, ThDD 3, October 29 - November 2, Montreal, QC, Canada (2006). |