【総務省SCOPEプロジェクト】超低消費電力光ノード実現に向けた超小型高速相変化光スイッチの研究開発

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導波路型波長選択光スイッチ

1.研究背景

光ネットワークノードにおいては、波長多重された光信号から任意の波長パスを任意のポートへ動的に切り替える機能が求められており、この波長選択機能を1つのデバイスで実現したものが波長選択スイッチ(WSS: Wavelength Selective Switch)である。 WSSには大きく分けて空間光学型と導波路型があり、導波路型は空間光学型に比べて波長数・ポート数では劣るものの、生産性、スイッチング速度、および小型化の面で優れているという特徴を有している。 本研究では石英導波路型WSSにおいて、高屈折率導波路への適用も視野に入れた新規構造を提案している。

2.研究目標

従来の導波路型WSSは、構成要素である波長合分波器および光スイッチの数、規模の問題により、C-band(1530 nm~1565 nm)を1台のWSSでカバーできていない。本研究では、1枚のチップに収まり、かつC-bandをカバーするWSSを実現する。

(a)固定グリッド型 WSS


新規スイッチ構造により、交差導波路の少ないポート数1×4のWSSを実現する。

(b)グリッドレス型 WSS


(a)と同様のスイッチ構造により、交差導波路を減じた低損失かつ損失不均一性の小さな1×2グリッドレスWSSを実現し、可変グリッド動作を実証する。

3.研究項目

(a)固定グリッド型 WSS




図1 1×4 固定グリッドWSSのレイアウト(a)および模式図(b)

1×4 WSSのレイアウトおよび模式図を図1(a), (b)に示す。周波数間隔100 GHz、チャネル数40でC-bandをカバーしており、6インチウェハ内チップに収まるサイズである。スイッチはN個(N=チャネル数)の1×M光スイッチ(M=出力ポート数)とN+3個のM×1波長カプラで構成されており、交差の少ない構造を可能にしている。これはポート数1×2の場合において交差のない構造を可能にするものであり、ポート数1×4は1×2を拡張したものである。


図2 固定グリッドWSSの透過特性


図3 固定グリッドWSSの信号伝送特性

1×4 WSSの透過特性および信号伝送特性を図2、図3に示す。損失の平均値7.3 dB、クロストークの平均値および最悪値はそれぞれ-30.5 dB, -19.4 dBであり、実用上問題のない特性を得た。

図3の信号伝送特性は、異なる2波長(λ0=1547.637 nmとλ1=1548.431 nm)のビットレート12.5 Gbps、信号長215-1疑似ランダムビット系列(PRBS)のNRZ信号を入力したときの、λ0信号の誤り率(BER)を測定したものである。BER=10-9におけるパワーペナルティは0.2 dB~0.6 dBであり、エラーフリー動作を確認した。

(b)グリッドレス型 WSS




図4 1×4 グリッドレスWSSのレイアウト(a)および模式図(b)

1×2グリッドレスWSSのレイアウトおよび模式図を図4(a), (b)に示す。サイズは4インチウェハ内チップに収まる大きさである。波長合分波器であるアレイ導波路回折格子(AWG)のチャネル間隔およびチャネル数はそれぞれ100 GHz、40チャネルでC-bandをカバーしており、各波長はそれぞれ4つの出力チャネルにまたがって伝搬する。スイッチ構造は上述の固定グリッド型WSSとほぼ同じであり、交差導波路の数は最大3つとなっている。


図5 同一スイッチ状態での透過特性

図6 可変グリッド動作特性

1×2グリッドレスWSSの透過特性を図5、図6に示す。図5は全波長が同一のポートから出力されたとき(周波数グリッド4000 GHz)の透過特性である。損失は4.5 dB~5.9 dB、クロストークの平均値および最悪値はそれぞれ-36.1 dB, -25.1 dBであった。 図6は周波数グリッドを変えたときの透過特性である。~400 GHz間隔までは特性の悪化は見られず、良好な可変グリッド動作を示している。200 GHz間隔で消光が小さくなるのは、各波長がAWGの4つの出力チャネルにまたがって伝搬するため(完全に分離できるのは400 GHz間隔以上)である。

(4)本研究に関する研究発表リスト

(a).論文
[1] Takemasa Yoshida, Hideaki Asakura, Takayuki Mizuno, Hiroshi Takahashi, Hiroyuki Tsuda, “Switching characteristics of a 100-GHz-Spacing Integrated 40-λ 1×4 Wavelength Selective Switch,” IEEE Photonics Technology Letters, vol. 26, no. 5, pp. 451-453, Mar. 2014.
[2] Yuichiro Ikuma, Takayuki Mizuno, Hiroshi Takahashi, and Hiroyuki Tsuda, “Integrated 40-λ 1×2 Wavelength Selective Switch Without Waveguide Crossings,” IEEE Photonics Technology Letters, vol. 25, no. 6, pp. 531-534, Mar. 2013.
(b).国際会議発表
[3] Takemasa Yoshida, Hideaki Asakura, Takayuki Mizuno, Hiroshi Takahashi, Hiroyuki Tsuda, “Silica-Based 100-GHz-Spacing Integrated 40-λ 1×4 Wavelength Selective Switch,” in Proc. 39th ECOC, London, U.K., Sep. 2013, pp. 1–3, paper We.4.B.3.
[4] Takemasa Yoshida, Hideaki Asakura, Takayuki Mizuno, Hiroshi Takahashi, Hiroyuki Tsuda, “Proposal for an Integrated 40-λ 1×4 Wavelength Selective Switch,” OECC 2013, ThL3-2, Kyoto, Japan, July. 2013.
[5] Yuichiro Ikuma, Takayuki Mizuno, Hiroshi Takahashi, Tatsuhiko Ikeda, and Hiroyuki Tsuda, “Low-loss integrated 1 × 2 gridless wavelength selective switch with a small number of waveguide crossings,” in Proc. 38th ECOC, 2012, pp. 1–3, paper Tu.3.E.5.